歯の神経を取らないといけない場合
「何もしないのにズキズキと歯が痛む」
歯の神経にばい菌が入ってしまうと、歯の根の消毒治療(根管治療)をしないといけません。
そのまま放置しておくと、ばい菌がどんどん神経の奥で増えて、歯の根が腐ってしまいます。
右下の奥の銀歯の中で、虫歯ができ、歯の神経にばい菌が入ってしまいました。
根管治療、つまり歯の神経を取る治療が必要です。
抜髄治療と感染根管治療
1度目の根管治療を抜髄(ばつずい)治療。
2度目以降の再治療を感染根管治療と呼びます。
実はこの根管治療は治癒率が100%ではありません。
平成26年の歯科治療のデータです。
このデータから分かることは、治療したはずの歯の、60%以上が再治療なってしまっているのです。
次は、根管治療の治癒率のデータです。
日本での平均の治癒率は50%〜70%程度との研究結果があります。
一番大事なことは初回の根管治療を丁寧に処置し、再発リスクをできるだけ下げることです。
ラバーダム
まずは、治療する歯の根の周りに、ラバーダムと呼ばれるゴムシートの膜を張ります。
口の中のばい菌や唾液が、治療する歯の根の中に入らないようにする為です。
ある研究によると、アメリカやヨーロッパでの使用率は60%以上ですが、日本でのラバーダム使用率は10%以下との事です。
歯と口の中を、完全分離してから銀歯の除去を開始します。
虫歯を除去すると、感染した神経が見えてきました。
ステンレススチールファイル
根の消毒をする器具です。
歯の根は数ミリの大きさですので、専用の細いヤスリで治療します。
一般的には0.15mm(#15)の大きさを使うことが多いですが、
それよりさらに細い0.08mm(#8)の特注品を使います。
こちらの器具は、一般的な歯科医院では滅菌消毒をして再使用します。
しかし、当院では根管治療の再治療のリスクを減らし、治癒率をできる限り上げる為、一度使用したら破棄します。
*ファイルの再使用は一般的な使用方法です。
昨今問題になった、歯科医院の器具の使い廻し等の危険行為ではありません。
滅菌して使用する為、感染リスクはありません。
なぜなら、#8の治療器具はとても細い為、耐久性がありません。
滅菌を繰り返すことによる金属疲労を不安視してます。
その結果、根管治療後の治癒率に差がでる為、再使用はおこないません。
この治療のポイントは、力任せに器具を操作せず、
丁寧にゆっくりと器具を操作することがポイントです。
ニッケルチタンファイル
次に形状記憶タイプのヤスリを使用します。
従来のヤスリは、柔軟性がない為、歯の根の奥深くまで治療することが、困難でした。
形状記憶合金のニッケルチタンファイルが開発されたことにより、根管治療の治癒率は飛躍的に向上しました。
根管洗浄
根管治療が短時間で終わらない理由が、洗浄時間です。
根の中に入ってしまったばい菌を次亜塩素酸ナトリウムで殺菌します。
次亜塩素酸ナトリウムは強い抗菌作用と有機質溶解作用があります。
この時大事なのが殺菌時間です。
短時間では効果が不十分です。
治療の中でも、特に時間をかけて殺菌します。
ここを短時間で済ませると後々、再治療の原因となります。
高速バブル洗浄装置
超音波と同等程度の、1秒間に6000回も振動する、ポリアミド製の柔らかい洗浄器具を使用します。
余分な歯を削ることなく高速バブルで、歯の根の隅々まで
次亜塩素酸ナトリウムを行き渡らせ、殺菌効果を高めます。
さらにその後、EDTA(エデト酸)で再洗浄します。
現在はアメリカやヨーロッパでは、「次亜塩素酸ナトリウム」と「EDTA」の交互洗浄が世界標準の治療法になっています。
治療後のレントゲン写真
根の先端までしっかりと、白い薬が詰まっていることが確認できます。
薬の入り具合で不十分ですと、再治療の可能性が高くなりますので、必ず治療後のレントゲンで確認をします。
我々、歯科医師はレントゲン画像である程度、治療の良否が判断できます。
レントゲンで白い薬が根の先まで詰めてあるか否かで、丁寧な治療がしてあるかどうか?信頼がおける先生かどうか?が分かってしまします。
精密根管治療が合う人
1、歯を大事にしたい、再治療を望まない方
2、時間がかかっても丁寧な治療を望まれる方
精密根管治療が合わない方
1、時間がかかることに同意頂けない方
2、今痛い所だけ治して欲しい方
3、長時間口を開けていることが難しい方
最後に歯科医師として思うこと
どれだけ我々が丁寧に治療しても、神経が無い歯の長期的な予後は心配があります。
歯科医師として、できるだけ根管治療は望みません。
なぜなら、予防により減らすことができるからです。
不幸にも根管治療になってしまう原因が「虫歯を放置してしまった」「前の治療が適切に行われていない」場合が多いです。
正しい予防法が広まることで、歯の悩みが無くなってくれると嬉しいと願っています。
ぜひ、定期検診をすることで大事な歯を守って下さい。
*精密根管治療をご希望の方は受付でお伝え下さい。初診時は充分な治療時間が取れない為、当日は検査のみとなりますのでご了承下さい。
山内歯科医多治見おとなこども矯正
歯科医師 山内敬士