30代の女性の妊娠中に突然、歯が痛くなってしまった方の「歯髄を残す」治療法をご紹介します。
基本的には妊娠中は、歯科治療は控えた方がよろしいです。
その為には、定期的なメンテナンスで、日頃から虫歯の有無をチェックをしておくと安心です。
それでも、突然な痛みがでてしまい治療が必要な場合は、かかりつけの産科の先生と相談の上、妊娠中期の4〜7ヶ月の安定期の治療が望ましいです。
痛みの症状で、「何もしなくても痛い」や「温かい物が凍みる」は神経まで到達する大きな虫歯の可能性があります。
まずは、母体に影響がないことを確認してレントゲンを撮影します。
どうやら、銀歯の中で再虫歯が発生しています。
レントゲンから診断すると、歯の神経の一部に、虫歯菌が侵入しているようです。
この場合、歯の神経を残す為には無菌的処置が必要があります。
唾液から歯を守る為に、ラバーダムで防湿します。
ラバーダムをして、銀歯を外しました。
すると、黒い虫歯が確認できました。
「スプーンエキスカ」と「虫歯検知液」を使用して慎重に虫歯を取り除きます。
赤線の先の小さな穴が、神経の入り口です。
体調を優先し、治療回数と治療時間がなるべく少なくなるよう、MTAで直接覆髄処置をします。
MTAで、歯の神経を封鎖します。
MTAの硬化後、アイオノジットで保護します。
術後にレントゲンで、神経までの深さを確認します。
青矢印の下の黒い部分が、「歯の神経」です。
右側の白い部分がMTAとアイオノジットです。
ギリギリ、神経を残して治療でき一安心です。
セラミック用の型取りをして、当日は治療終了です。
今回は患者さんの体調を優先しましたので、型取りから装着まで1ヶ月程空きました。
セラミックでも、銀歯でも被せる前に一番大事な事は「被せる前の歯の清掃」です。
型取り後に、仮蓋をします。
しかし、仮蓋の隙間からバイ菌が侵入します。
実際に仮蓋を外した所です。
一見、問題なくキレイに見えますが…
プラークチェッカーでバイ菌を染め出してみます。
こちらの薬は、プラークと呼ばれるバイ菌に染まります。
紫色に染まった所が、バイ菌です。
キレイに見えても、実際は隙間からバイ菌が侵入しています。
このまま、例えば水洗いのみで被せ物を装着してしまう事で、再虫歯を引き起こす原因になります。
仮蓋の中のバイ菌を、ジェットパウダーでクリーニングしています。
粉状の極小粒子の「グリシン」を使うことで、歯を傷を付けずに清掃することができます。
歯を清掃したら、セラミックも同じくでセラミック清掃材の「イボクリーン」で清掃します。
仮合わせをした際に、セラミックには唾液が付きます。
唾液による汚染で、セラミックの接着強度が落ちることが研究により分かっています。
この一手間で、セラミックが口の中で長く安定します。
その結果、歯の寿命が長持ちします。
接着面が汚染されない様に、強度の高い「レジンセメント」で装着します。
超音波で微振動をかけて、気泡を抜きます。
光硬化を促進させます。
セラミックを装着して、神経を残すことに成功しました。
1. ラバーダム防湿
2. MTA
無菌的治療により、神経を残せる可能性は高まります。
神経を残すことで、「歯の寿命」が伸びます。
歯の寿命を伸ばしたい方は、お気軽にご相談下さい。
山内歯科多治見おとなこども矯正
歯科医師 山内敬士