かかりつけの歯科医院で、急に「神経を抜かないとダメ」と宣告をされ、突然のことでビックリされてしまった方よりメールで相談を受けました。
定期健診もしっかり通っていたのに何故!?との思いがおありでした。尚且つ歯の寿命が短くなる為、神経はどうしても残したい。そんな思いで神経を何とか残せないか、とMTAセメントをお調べになったそうです。
一般的には神経を取らないといけない場合でも、MTAセメントであれば神経を残せる可能性があります。MTAを成功させるためにはどうしたら良いか。MTAで失敗しないコツをお伝えします。
歯は一生の財産です。神経を残せれば、歯の寿命は圧倒的にの延びます。歯の寿命を延ばすことで、美味しいものを食たり、楽しく会話する。そんな笑顔溢れる毎日をお過ごし頂ければと思います。
数年間より、3か月毎の定期健診に通われていましたが、赤丸部に虫歯を指摘されたそうです。その際に、経過観察で「様子を見ましょう」と指示されたそうです。
しかし、先日の定期健診時に、担当医師に宣告されたのは「神経を取りましょう」との診断でした。はたして経過観察の診断は正しかったのでしょうか。
この時に大事なことは、「正しい診断」です。
経過観察をして、進行を止めれる虫歯なのか。今すぐ治療をした方が良い虫歯なのか。を判断しなければいけません。その為に、必要なことはレントゲン検査です。
赤矢印の黒い箇所がすべて虫歯です。歯の神経と非常に近接しています。いつ痛みがでてもおかしくない状態です。
幸い今回は痛みがでていなかった為、MTAの適応症と判断しました。MTAが適応となるかどうかは、自発痛と打診痛の有無で決まります。歯髄炎はレントゲンのみでは、分かりません。
「自発痛」とは何もしなくてもズキズキする痛み、のことです。神経にバイ菌が入ってしまうと、痛みがでます。痛みがでてしまってからですと、手遅れになる場合が多いです。
「打診痛」とは歯をトントンと叩いた時の痛み、です。近い痛みの種類に、「咬合痛」があります。噛んだ時の痛み、です。同じく打診痛や咬合痛があると、全部性歯髄炎の可能性が高まります。根の先まで虫歯菌が入ってしまうと、神経を取る可能性が高いです。
今回は、神経を守るためには緊急を要します。尚且つ、遠方よりお越しの為、治療回数を極力少なくする必要があります。
MTAセメントとダイレクトボンディングで、1dayトリートメントを行いました。
歯と歯の間から虫歯が進行しています。赤矢印に大きな虫歯があります。口の中の診察だけでは分りづらい為、見逃してしまうと発見が遅れてしまいます。定期健診の際は、レントゲン撮影でも確認して頂くとよろしいです。
1. 奥歯を治療した際に、誤って手前の歯を削ってしまった虫歯
2. 銀歯の劣化による虫歯
青矢印部が以前の治療でプラスチックの樹脂(レジン)が詰めてあります。よく観察すると段差が見られます。レジンが手前の歯に食い込む様に詰めてしまっています。誤って奥歯の治療中に手前の歯を削ってしまっていたとすると、どうなってしまうでしょうか。
赤矢印部と青矢印部の黒さの違います。赤矢印が真っ黒で、青矢印が薄く黒くなっています。歯が虫歯等で溶けてしまうと色がだんだん黒くなっていきます。真っ黒のところは「歯が存在しない」事を意味します。赤矢印部は、虫歯が進行しすぎて歯がなくなってしまったのか、或いは誤って歯を削ってしまったのか。
歯の表面はエナメル質と呼ばれる固い組織が存在しますが、内側は象牙質と呼ばれる柔らかい組織です。誤ってエナメル質を削ってしまい、象牙質が剥き出しになると、そこから虫歯はあっという間に進行します。
歯の間の治療は、特に丁寧に治療をしてもらうとよろしいです。山内歯科多治見おとなこども矯正では「メタルガード」を使用し、隣の歯が傷つくことを防いでおります。
先ずはラバーダムを装着します。MTA治療で失敗しない為には、無菌的処置が欠かせません。ラバーダム防湿をし、唾液からバイ菌が入ることを防ぎます。
銀歯を外し、虫歯の状況を確認します。
歯茎よりもだいぶ下まで虫歯は進行してしまっていました。黄色い色をしている虫歯ですので、急性虫歯です。進行が早い虫歯です。
余分に健康な歯を削りすぎない為に、スプーンエキスカで虫歯を取り除きます。この方法でしたら、隣の歯を誤って削ることはありません。
欠点は「時間がかかる」ことです。ドリルで削ると虫歯の除去は早いです。しかし、健康な歯も削ってしまう危険があります。今回はレントゲンより、神経にとても近い事があらかじめ分かっておりました。
神経の近くで高速回転の器具を使うと、発熱等で神経が死んでしまう恐れがあります。
健康な歯を削らない為、虫歯のみに染まる虫歯検知液を使います。虫歯のみが赤く染まるので、健康な歯を削ることがありません。
※虫歯検知液についてもご覧下さい。
赤く染まったところのみスプーンエキスカで除去します。
遊離エナメル質は破折の可能性がある為、残念ながら除去します。
ひたすらスプーンエキスカで除去します。地道な治療ですが、歯を守る為には大事な治療法です。
虫歯を取り切ると、赤矢印に神経が見えてきました。無菌的処置と高速回転器具を使わず、神経を守ります。
露出した神経は「次亜塩素酸ナトリウム」で十分消毒します。
MTAセメントが固まるまで時間を待ちます。
MTAセメントを完全封鎖します。この時は、「アイオノジット」を使います。
歯がどの位残っているか、や様々な条件でダイレクトボンディングかセラミック修復をするか術中診断で決定します。
今回はダイレクトボンディング法で1日で治療終了です。
愛知県刈谷市から岐阜県多治見市の山内歯科まで、往復3時間かけて治療にお越し頂きました。遠方よりお越し頂き、長時間の治療お疲れ様でした。私のブログも楽しみご覧頂いているとのことで、励みになります。
毎日毎日神経を取らないといけないのか、と悩まてれいると伺い、解決のお手伝いができ嬉しく思います。
MTAセメントは、神経を残せる可能性が高い治療法です。歯の神経を残すことで、歯の寿命が延びます。歯を守ることで、健康寿命を延ばすお手伝いができれば幸いです。
丁寧に治療をすればもちろん時間はかかります。ただ、その変わり予後は圧倒的に長持ちします。多治見市や、土岐市、瑞浪市、可児市で歯の寿命を延ばす治療をご希望の方は、山内歯科多治見おとなこども矯正にご相談下さい。
山内歯科多治見おとなこども矯正
歯科医師 山内敬士