「重度の歯周病です。抜歯をしないといけません・・・」
実は抜歯の原因の第1位は”歯周病”です。約37%が歯周病で抜歯になるとご存じでしたか!?さらには、重度の歯周病になると、歯の神経が死んでしまう場合があります。
できれば、ご自身の大事な歯を残したいですよね。重度の歯周病でも”歯の再植”で保存できる可能性があります。
今回は、重度歯周病で神経が死んでしまった歯を、再植術で抜歯を避ける事ができた治療例を紹介します。
「奥歯の歯ぐきから膿がでてきて、グラグラ揺れるんです!」
パッと見たところ、一見健康そうな歯に見えます。しかし、検査の結果、重度の歯周病が進行しています。歯周病の検査をしたところ、歯周ポケットが10mmありました。
歯周病の怖いところは”静かなる病気”と呼ばれており、全く自覚症状がなく病気が進行します。「あれ?おかしいかな!?」と思ったころには、想像以上に進行している場合が多いです。
レントゲンを撮影したところ、赤矢印部の歯の根の先が真っ黒に映りました。
根尖病変と呼ばれる、根の先にバイ菌が溜まる病気です。この場合は、歯の神経が既に死んでしまっている場合があります。歯髄電気診で神経が、生きているかどうかを調べます。神経が死んでいるまま放置しておくと、歯の周りのアゴの骨がどんどん溶けて失われてしまいます。
歯髄電気診の「パルプテスター」を使います。歯に微細電流を流して、生死を確認します。
検査の結果、残念ながら歯の神経は死んでしまっていました。この病状は「歯内歯周病変(E-P lesion)」と呼ばれ、歯周病と歯内の病気がお互いに影響を及ぼしあい、病態を複雑化してしまっていました。
治療法として、歯周病と根の消毒治療の両方を計画します。まずは歯周病の治療をおこない、その後、根の消毒治療を進めました。根の消毒治療は根の先まで、確実に消毒することがポイントです。
残念ながら、今回は歯周病治療と根の消毒治療をすすめても、改善ははかれませんでした。実際の歯の状態です。歯ぐきからドバドバっと大量の膿がでてきます。
今回の治癒が悪い原因は、奥歯の分岐部と呼ばれる根の股です。分岐部にバイ菌が住み着いてしまうと、歯周病治療で除去することが非常に困難になります。分岐部の奥深くが物理的に、治療器具が届かないことが原因です。
こうなると、抜歯も選択肢に入ってきてしまいます。しかし、ここで諦めてはいけません!最後の一手が”意図的再植”です。
まず、歯を抜歯します。そして、分岐部のバイ菌を口の外で除去して、再度歯を元に戻す治療法です。
歯の再植に必要な条件
1. アゴの骨が十分に残っている
2. 歯の根の”歯根膜”が保存されている
3. バイ菌で汚染されていない
この中で特に大事なことが、アゴの骨が十分に残っている事です。
歯周病でアゴの骨が溶けてしまっていると、移植した歯を安定させる事が難しくなってしまいます。ですので、歯周病は早期に治療し、アゴの骨を守ることが非常に大事です。
まずは、周りの骨を傷つけないように、丁寧に歯を抜きます。骨にダメージを与えてしまうと、治療結果がうまくいきません。
やはり原因は、根分岐部のバイ菌でした。この様に奥まった場所にバイ菌が繁殖してしまうと、口の中からの治療では困難です。
歯根膜を守りながら、バイ菌を除去します。
続いて、歯ぐきの中のバイ菌を除去します。バイ菌をしっかりと除去することで、失われた骨が新しく再生してきます。ていねいに。ていねいに。
バイ菌を除去した歯を、再植します。歯が生着する為に、糸で固定します。動かないように固定することがポイントです。
1か月待ちました。経過も良好な為、銀歯を被せる型を取ります。
銀歯を被せて、またしっかり噛める歯が蘇りました。抜歯の可能性があった歯が復活です!
レントゲン写真も黒い部分が小さくなってきているのが分ります。
分岐部も歯磨きがしやすい形態に修正しています。患者さんも長持ちできるよう、ブラッシングを頑張って頂いているので一安心です。
歯周病で抜歯を宣告された歯も、条件が良ければ”歯を残せる”可能性があります。しかし、歯周病が進行し過ぎてしまうと、骨がどんどん溶けて無くなってしまいます。
できるだけけ早く治療を開始することが肝心です。歯周病は放置しても勝手に治ることはありません。
山内歯科多治見おとなこども矯正は、2021年現在、全国で約10%しかない厚生労働省認定の「かかりつけ歯科医療機能強化型歯科診療所」です。歯周病安定期治療(SPT2)や歯周病重症化予防治療(P重防)ができます。
多治見市で”歯を守りたい方”、”生涯ご自身の歯で過ごしたい方”は、お気軽にご相談下さい。
山内歯科多治見おとなこども矯正
歯科医師 山内敬士