「前歯は抜歯しないといけません」
前歯が折れてしまい、他院で抜歯宣告をされてしまいました40代の女性の患者さんです。
「大事な前歯ですので、なんとか残すことはできませんか?」
できれば自分の歯を残したいお気持ち、とても良く分かります。当院では、歯をできるだけ残す方針で治療させて頂いております。
今回は矯正的提出法「エクストルージョン」で抜歯を回避する方法をお伝えします。
40代の女性の方より、ご相談を受けました。10年以上前に治療した前歯が折れてしまったとのことです。
前医では、歯冠(歯の頭部分)が残っていない事から、抜歯を宣告されたとのことでした。
実際の口の中です。
歯茎の中にまで及ぶ、歯の破折が確認できます。
ほとんど、ご自身の歯が残っておらず、歯を残す事が難しい状態です。
通常、神経を取った歯には、「クラウン」と呼ばれる差し歯を被せます。一般的には「被せ物の歯」「差し歯」と呼ばれる事が多いです。
歯の根がある歯には「クラウン」の治療ができます。
しかし、クラウンを被せる為にはある程度の歯の頭が残っている必要があります。
クラウンの中です。土台となる歯がクラウンを支えています。
具体的にはクラウンを維持する為に、「歯茎より上に健康な歯が2mm以上残ることが望ましい」との研究結果がでています。歯科専門用語でフェルールと呼びます。
つまり、こちらの歯を残すためには歯茎より上に2mm以上、歯があれば良いわけです。
歯茎より上に歯を「引っ張り上げる」事で、保存可能と診断しました。
両隣の歯を軸とする為に、歯科用接着剤で針金を渡します。そして、患歯にゴムを着けて牽引します。
ゴムの張力を利用して、綱引きの要領で歯を引っ張り上げます。
治療中は、表面に仮歯を装着します。歯が無い期間はありませんので、安心して下さい。
治療後2ヶ月の状態です。レントゲン写真で比べます。
赤線から、青線の位置に歯が移動しています。
実際の口の中です。
歯茎の上に2mmの歯を作ることに成功しました。フェルールを確保できた為、安定した予後が予測されます。
セラミッククラウンを作製します。
セラミッククラウンを装着して治療終了です。
抜歯の危機を回避し、前歯を残すことができました。
歯の根が折れたり、前歯が割れた場合に、絶対にしてはいけないことがあります。
アロンアルファ等の市販の瞬間接着剤でくっ付ける事です。残ってる歯に悪影響がでます。先ずは歯科医院へ受診する事を、お勧めします。
歯が割れてしまった場合でも、歯を残す方法はあります。安易に抜歯をしてしまうと、後戻りはできません。
先ずは、歯科医院で治療の選択肢を相談して下さい。できれば時間がかかっても歯を残すことは、非常に価値があると考えます。